第90章 女の勘は結構当たる。
桂がふいに見せた温かい陽だまりのような表情。それがずっと頭から離れない。
(葵咲:なんだろう、凄くモヤモヤする…。)
単なる行き着けのラーメン屋の話。ただそれだけのはずなのに…嫌な胸騒ぎが浮かんで消えない。早くスッキリさせたい気持ちと、安心感を得たいという気持ちが入り混じり、告白したいという想いへと変化を遂げる。
この想いを伝えたい、溜まってるものを全部吐き出してスッキリしたい。でも…今の関係が壊れてしまう事が、怖い…。伝えたら、今まで通りじゃいられなくなるかもしれない。後戻りは出来なくなる。それならいっそ…このままの方が・・・・。
そんな葛藤が葵咲の中で渦巻いていた。
その時、ふと先日のデートで桂が放った言葉が甦る。
桂『我慢しなくて良い。欲しいものを欲しいと言って良い。己の心がままに。お前の好きなように、魂の命ずるまま生きて良いんだ。』
(葵咲:…後悔はしたくない。あの時みたいに、言えなかった事を後悔するより、言って後悔する方が良い。)
葵咲は固い決意を胸に、立ち上がった。