第90章 女の勘は結構当たる。
そして短冊と睨めっこ中の葵咲。書き記す願い事を悩んでいる模様。いや、願い事自体は決まっている。一つしかない。だが、その書き方について悩んでいるのだ。葵咲は、唸りを上げながら眉根を寄せる。
(葵咲:流石に太郎ちゃんの名前書くのはNGだよね…。『この奇跡がずっと続きますように』、『大好きな人と結ばれますように』…うーん、どうしよう。太郎ちゃんは何て書くのかな?…もし・・・・)
葵咲は思考から逸脱し、妄想の中へとトリップし始める。妄想の中の葵咲は、そっと桂の短冊を覗き込みながら笑顔で話し掛けた。
葵咲『ねぇ、太郎ちゃんは何て書いたの?』
桂『“可愛い幼馴染と結ばれますように”…。』
葵咲『可愛い…幼馴染…?』
桂『勿論、今隣にいるお前だ、葵咲。俺と…一生を添い遂げてくれないか?』
妄想内の桂は割増でキラキラしている。爽やかなイケメンスマイルで葵咲の瞳をじっと見据えるのだ。トリップから戻って来た葵咲は心臓をバクバクさせながら顔を真っ赤にする。
(葵咲:とかいう展開になったらどうしよう!?キャーーー!まだ心の準備が…!!)
と、心の中で叫んだところで、ふと我に返る。隣で真剣にスラスラと願い事を書き綴る桂の横顔を見て現実に引き戻されたのだ。
(葵咲:…ってそんなわけないか。太郎ちゃんだし。“打倒真選組”とかかな。)
クスリと笑って葵咲は桂の手元へと視線を落とす。見ると桂の書いた願い事に気になる文言があった。
『北斗心軒が宇宙に名を馳せますように。』
葵咲「“北斗心軒”?」