第90章 女の勘は結構当たる。
水族館横の公園内を歩く葵咲と桂。葵咲はひどく緊張した様子でカチンコチンになりながら歩いていた。今にも右手右足が一緒に出そうな勢いだ。そんな葵咲を横目に、桂は少し不思議に思いながらも特に追及はせずに一緒に足を進めた。
そして公園内の広場に出る。広場中央には雨除けの簡易テントが張られており、その下でイベントが行なわれていた。
桂「そうか、もうすぐ七夕か!」
大量の笹の葉に飾られた短冊。イベント会場入口には短冊を配っているスタッフがいる。スタッフはイベント会場内を眺める桂と葵咲に声を掛けた。
「そちらのお二人さんも如何ですか?是非短冊に願い事を書いて行って下さい。」
桂「うむ。折角だ、書くとするか。」
そう言って桂はスタッフから二枚の短冊を受け取る。そして一枚を葵咲に渡し、近くのテーブルへと足を向けた。
テーブルには様々な色のサインペンが備え付けられている。桂は無難に黒を手に取る。葵咲は迷った末、恋愛運のアップしそうなピンクのペンを手に取った。
そして二人が短冊と睨めっこし始めた頃合いで、銀時と一郎兵衛もイベント会場へと足を踏み入れる。するとすぐさま女性スタッフが二人、一郎兵衛の傍へと駆け寄り、短冊を渡した。
「あの!短冊にお願い事、是非書いて行って下さ~い♡」
一郎「え?ああ、サンキュー。」
スタッフの事など視界に入っていなかった一郎兵衛。葵咲と桂の事以外眼中にないといった状態だが、一応二枚の短冊を受け取る。勿論一枚は銀時の分だ。そんな上の空状態ではあるが、すんなり短冊を受け取って貰えた事に対して女性スタッフは目を見合わせて黄色い声を上げた。
「きゃーーーー♡」
銀時「・・・・・。」
ここでも取り残される銀時。まぁ今回は女装しているが故 仕方ないと言えるが、恐らく男の姿でも同じ対応だっただろう。その情景がありありと思い浮かび、銀時は心底複雑な心境地に立たされた。