第89章 恋をしている時は、全てにおいて奇跡や運命に紐づけてしまう。
大声で叫んで否定するも聞き入れてもらえない。山崎は片眉を上げて銀時を指差しながら言った。
山崎「でもこの間も副長に…。」
銀時「あれは俺じゃねぇ!俺であって俺じゃねェェェェェ!!」
山崎「あーハイハイ、第二の人格的な?」
何を言っても聴く耳持たないといった様子の山崎。山崎はひとつため息を吐いて、お手上げのポーズをして見せた。
そして銀時は更なる大声を出して反論する。
銀時「違うゥゥゥゥゥ!!何その物分かりの良さ!そんな素直さいらねーんだよ!!」
山崎「はいはい。…あれ?アンタは確か吉原の…。」
一郎「!」
ここで山崎が銀時の隣へと目を向け、隣に誰がいるのかに気付いた。ヤバイ。一郎兵衛は瞬時に悟る。自分が銀時の意中の相手に勘違いされてしまうと…!
その勘は的中し、山崎は新たな誤解による見解を述べた。
山崎「…なるほど。ずっと女の人ばっかり相手してて気に病んで男に…。」
一郎「違うゥゥゥゥゥ!断じて違う!俺まで巻き込むな!」
銀時「いや!明らか巻き込まれてんのは俺の方だろーが!!」
この局面だけ見れば巻き込まれたのは一郎兵衛だが、元はと言えば一郎兵衛がカップルを装う事を提案したのが原因。いや、更に言えば一郎兵衛が惚れ薬を使用した事が原因だ。巻き込まれたのは銀時の方である。
あまりの理不尽さに声を大にして抗議する銀時。だが一郎兵衛は今起きている問題の火消しに夢中でそんな申し出など聞こえていない。一郎兵衛は再び山崎に向かって叫んだ。
一郎「俺は女が大好きだ!!」
銀時「いや、その発言もどうなんだよ。」
あまりの突飛な発言に冷静さを取り戻す銀時。その台詞を聞いてか聞かないでか、一郎兵衛は銀時の方へと目を向けて呆れたような顔を浮かべながら言葉を放った。
一郎「なぁ、俺の名誉の為に説明していい?」
銀時「俺の名誉の為に説明しろォォォォォ!!」
そうして銀時達は山崎に事の成り行きを話した。
勿論、葵咲と桂が幼馴染である旨は伏せて。葵咲が高杉と幼馴染である事は葵咲本人から明かされているが、桂との関係も話しているかは分からない。その為、念の為その件は伏せて状況を説明したのだった。