第89章 恋をしている時は、全てにおいて奇跡や運命に紐づけてしまう。
さて。気を取り直し、銀時は女装姿のまま、一郎兵衛はいつもどおりの男の恰好へと戻って葵咲達の尾行再開。
結局一郎兵衛の提案どおり、一郎兵衛が男役、銀時が彼女役のカップルスタイルにする事にした。一郎兵衛が女装姿のままだと結局ナンパ男達が群がってしまい、尾行がままならないと判断された為だ。カップルを装う為に、銀時は一郎兵衛と腕を組んで歩く。この事で先程のように異性から声を掛けられる事はなくなった。
一郎「だから言ったろ。カップル(こっち)の方が外野がしゃしゃって来ねぇんだって。」
銀時「…でも女からの俺に対する視線が痛ぇんだけど。あれ絶対目からビーム出てるよ。俺の身体穴だらけになりそうだよ。」
確かに、カップル相手にナンパするチャレンジャーはなかなかいない。女性が可愛くて男性がひ弱そうな場合は絡まれる可能性もなくはないが、一郎兵衛とパー子ならそれもないだろう。色んな意味で。
一郎兵衛の言う事は最もなのだが、今の状態は銀時にとっては非常に居心地の良くないものであった。それは自分だけ女装しているという意味ではなく、別の意味合いによるもの。そう、やたらデカイテンパ女がイケメンと腕を組んで歩いている。その事実は女性の反感を買っていたのだ。銀時は周りにチラチラ目を向けながら苦笑いを浮かべた。
そんな折、突如背後で聞いた事のある声が上がる。
「え?万事屋の旦那!?」
銀時・一郎「!!!!!」
反射的に振り返ってしまった。振り返ると、そこには私服姿で佇む山崎の姿が。
銀時は慌てて組んでいた手を離すも手遅れ。山崎は何か閃いたように少し瞳を大きくした後、苦笑いを浮かべて銀時を見据えた。
山崎「…あ~…やっぱり…。」
銀時「何そのやっぱりって!違う!違うから!違うからァァァァァ!」
山崎に何を誤解されているのか、銀時は瞬時に悟った。