第88章 恋バナを心から楽しめるのはリア充だけ。
一郎兵衛は少し考えるように顎に手を当て、銀時の全身を見定めるように見つめる。そして銀時に質問を投げ掛けた。
一郎「銀、お前身長何センチ?」
銀時「? 177だけど。」
何を唐突に。
銀時は話の筋が読めなかった。男二人で水族館が怪しいという話とどう結び付くのか。
片眉を上げて睨む銀時に対し、一郎兵衛はうん、と頷いて銀時の肩にポンと両手を置いた。
一郎「よし、じゃあお前が女役な。女装しろ。」
銀時「なんでだァァァァァ!!」
突拍子のない提案に思わずツッコミを入れる銀時。だが一郎兵衛は至って真面目な表情で言葉を返す。
一郎「だって男二人が怪しいなら、どっちかが女装してカップル装うしかねーだろ。」
銀時「“しかねー”ことねーだろ!それにしたってなんで俺が女役なんだよ!!」
一郎「だって俺182センチだし。そっちの方が自然じゃん。」
銀時「愛に身長は関係ありませんんんん!逆のカップルもいます!!つーかお前だって顔割れてんだから尾行バレんだろーが!オメーも女装しろよ!!」
理不尽な要求には正当な反論を。先日からのあまりの理不尽さに、銀時も堪忍袋の緒が切れそうだ。
その空気を読んだ一郎兵衛は、口を尖らせながらも、ひとまず銀時の意見を受け入れる。
一郎「えぇー。まぁ男二人よりは女二人の方が自然だとは思うけど…多分そっちの方が動きづらくなるんじゃねーかなー…。それに・・・・。」
じーっ。
更に吟味するように銀時の全身を見つめる一郎兵衛。次は何を言われるのやら。
銀時は少し身構えてしまうが、一郎兵衛は頭をボリボリと掻きながら小さくため息を吐いた。
一郎「後悔しても知らねーぞ。」
銀時「?」
そうして二人は女装する事になった。