第88章 恋バナを心から楽しめるのはリア充だけ。
そうして二人が項垂れていると、葵咲が戻って来た。
葵咲「ごめんね、話の途中で。」
銀時「もう終わってくれて良いんだけど。」
銀時がボソリと呟くも、その言葉は葵咲には届いていない様子。
席に着くなり、再び先程の続きを話し始めようとする。
だがここで、それより先に一郎兵衛が割って入った。
一郎「で?当日はどういうコースにすんの?」
今までは葵咲が一方的に話していたが、ここで初めてこの件に対する質問を与えられた。自分の話に興味を持ってもらえたと思い、葵咲はパァッと表情を明るくする。そして嬉しそうな笑顔で一郎兵衛の質問に答えた。
葵咲「あ、そう!土曜は水族館行って、近くの公園でお弁当ご馳走しようかなって。その後はね~…。フフフ、ここからは秘密!」
照れながら顔をくしゃっとし、右手の人差し指を口元に当てる葵咲。その素振りと秘めた言葉に、一郎兵衛の心はズキンと痛む。何とか平常心を保ちながら言葉を返した。
一郎「なんで?」
葵咲「な~んか話すと幸せが零れちゃいそうな気がして。」
銀時「なんだそれ?」
葵咲「まぁジンクス?っていうか…自分ルールみたいなもの。」
思わず銀時が質問を返すも、結局、葵咲は最後まで口を割らなかった。
その事に少ししこりを残しながらも、飲み会は宴もたけなわとなり、日付が変わる前にお開きとなった。