第87章 恋する乙女のバイブルは星座占い。
本棚の陰から葵咲をそっと見守る銀時達。葵咲はファッション雑誌を手に取り、何やら神経に見入っている様子だ。本来ファッション雑誌の立ち読みとはパラパラとめくり見るものではないのだろうか。少し疑問を浮かべた銀時達は、目を凝らして葵咲の手に取った雑誌のページに目をやる。
すると、星座占いのページを開いているのが見えた。
一郎「今月の星座占いのページ見てるゥゥゥゥゥ!!」
自分の恋愛運を見に来たようだ。自分の星座をチェックし終えた葵咲は、何やら浮かない表情を浮かべている。あまり良くない事が書かれていたのだろうか。すると今度は別の雑誌を手に取った。何のページを見ているのか、目を凝らしてそれも覗き見ようとする銀時達。
葵咲が見ていたページは…
銀時「…やっぱり占いのページだったァァァァァ!」
今度は嬉しそうな顔を浮かべている。こちらの雑誌では良い事が書かれていたのだろう。遠目に見ても分かる。恋愛運のハートマークが沢山並んでいた。
こうして見れば葵咲も普通の恋する乙女に変わりない。だがこれは薬による効果である。それを知っている銀時達は複雑な表情を浮かべた。
銀時・一郎「・・・・・。」
銀時「なんか俺、胸がチクチクしてきたんだけど…。」
一郎「言うな銀、俺の方がもっとだっての。」
罪悪感に駆られながら葵咲の背中を見守る二人。何とも言えない申し訳ない気持ちを抱えていると、突如葵咲が雑誌を置いて振り返った。
葵咲「あれ?銀ちゃんに一郎君?」
(銀時・一郎:んげェェェェェっ!)
葵咲は決して二人の存在に気付いていたわけではない。ただこの場を去ろうとして振り返っただけなのだが、銀時達は対応に遅れ、葵咲に見付かってしまったのだった。