第87章 恋する乙女のバイブルは星座占い。
だがそんな時に限ってトントン拍子で進む会話に、葵咲はぐるぐるとテンパってしまう。そんな彼女には構わず桂が口を開いた。
桂「待ち合わせ場所は俺から指定させてはもらえまいか。これでも追われてる身なのでな。」
葵咲「あ、う、うん!勿論!」
桂「また追って連絡する。ではな。」
そう言って桂はその場を立ち去る。葵咲は暫くの間、頬を高揚させたまま桂の背を見送っていた。そんな二人の様子を見ていた銀時と一郎兵衛は、心の中で叫んだ。
(銀時・一郎:えええええぇぇぇぇぇぇぇ。)
こちらの二人も少しの間放心状態で立ち尽くしていたのだが、先に銀時が我に返り、走り出した。銀時が動いた事で一郎兵衛もハッとなって銀時を追い掛ける。
銀時は葵咲がいる場所を避けて桂の向かう先へと先回りをする。そして桂の姿を見付け、大声で呼び止めた。
銀時「おい!ヅラァァァァァ!!」
桂「ヅラじゃない、桂だ。」
思わず条件反射でいつもの返しをしてしまう桂。桂は振り返り、銀時の方に目を向けた。
桂「どうした?銀時、血相を変えて。」
銀時「お前!さっきの…!!なんで快く快諾してんだよ!?」
一郎「おい銀、パニックすぎて“関節のパニック”みたいになってんぞ!」
銀時「それを言うなら“音速のソニック”な!」
すぐに追いついてきた一郎兵衛がツッコミを入れる。“快諾”という単語には既に“快く”という意味合いが含まれている為、二重の意味合いになってしまうのだ。それは音速のソニックも同じ。ソニック自体が音速の意味合いを持つ。ちなみに“関節のパニック”とは、ワンパンマンにてサイタマ先生が間違えたワードである。
少し話が逸れてしまったが、銀時のそんなツッコミに対し、桂は至って平然とした態度で応対する。
桂「なんだ、見ていたのか。他でもない幼馴染の頼み。断る理由が何処にある。お前も一緒に来るか?」
なるほど、恐らく桂は葵咲からの誘いをデートとは認識していないのだろう。一郎兵衛はそう理解した。まぁそれも無理もない話である。今までお互い異性として全く意識していない間柄。そんな関係にある二人であるならば、意識して誘いを断るはずもない。