第87章 恋する乙女のバイブルは星座占い。
少し冷静さを取り戻す一郎兵衛に対し、銀時は怒りのテンションのまま言葉を返す。
銀時「いや、行けるわけねーだろ!人のデートについて行くとかどんだけ野暮なんだよ!!」
桂「デートじゃない、密会だ。」
銀時「いや、それ一緒!」
色々とごもっともなツッコミであるが、沸々と苛立ちを露わにする銀時に対し、桂は袖に両腕を通して腕を組む。そして大きな口を開けて笑い声をあげた。
桂「はっはっは。デートなどと浮ついたものではないという話だ。葵咲が俺をデートになど誘うわけなかろう。あいつは今や真選組で、俺は攘夷志士。禁断の恋になるではないか。…ん。禁断の恋という意味では“人妻との恋”に通づるものがあるな…。」
何かを思い付いたように顎に手を当て考え込む桂。だが今回はすかさず一郎兵衛の方がツッコミを入れた。
一郎「いや、それと一緒にすんなよ。」
桂「まぁそれはさておきだ。今や真選組の葵咲が俺をデートになど誘うわけないという話だ。」
銀時・一郎「!」
桂「それに、もしそういう感情があったのなら、もっと早くに誘い出しているだろう。今このタイミングでそれを行なう事に解せん。」
一郎「まぁ的を得てるんだけど…。」
桂も全くのバカではないのか。そんな風に関心を寄せる二人。今の葵咲の惚れ薬効果の件を知っているからこその慌てふためく二人だが、それがなければ桂の解釈と対応は当然のものなのだ。ここは桂にも理解と了承を得る為に、惚れ薬の件を話しておくべきだろうか。そんな事を考える二人だったが、それより先に桂が口火を切った。
桂「真選組で何かあったのかもしれんな。もしや真選組を出て攘夷志士になりたいという嘆願なのかもしれん…!」
銀時「いや、それはねーけど。」
ようやく冷静さを取り戻す銀時。普段の死んだ魚のような目に戻ってツッコミを入れる銀時に対し、桂はフッと笑みを漏らして銀時へと向き直った。
桂「案ずるな銀時。お前の初恋を汚すようなゲスな真似はせん。」
銀時「なっ!なんでその事知ってんだァァァァァ!!」
再び血圧を上げるような態度に逆戻りの銀時。今度は怒りではなく、恥ずかしさで顔が真っ赤になっている。銀時は初恋の相手について桂には話していなかったらしい。だがそれがバレていた事に衝撃を受けたのである。