第87章 恋する乙女のバイブルは星座占い。
外へ出たついでに新八は玄関先を掃除していた。そんな新八に銀時は声を掛ける。
銀時「新八。」
新八「あれ?銀さん、一郎兵衛さんと出掛けたんじゃ?」
掃き掃除をしていた手を止めて顔を上げる新八。この日は朝から一郎兵衛が銀時を迎えに来て、終日出掛けると出て行ったのだった。まぁ一郎兵衛が無理矢理銀時を引きずり出した、と言った方が正しいかもしれないが。その銀時がものの数十分で戻って来た事に新八は少し驚いたのだ。
ちなみに新八や神楽と一郎兵衛は、今はもう顔馴染みだ。一郎兵衛が銀時を飲みに誘いに来る事が増え、馴染みになったらしい。
だが銀時は新八の質問には答えずに自らの質問をぶつける。
銀時「さっき葵咲来てなかった?」
新八「え?ああ。銀さんも桂さん探してるんですか?」
銀時「ヅラ?」
玄関先の物音を聞きつけ、神楽も表へと出てきた。先程表には出て来なかった神楽だが、中で話は聞いていたようだ。もしかしたら表から見えなかっただけで、玄関先にはいたのかもしれない。新八に代わり、話の続きを神楽が答える。
神楽「キサキサ、ヅラ探してるみたいで連絡先知らないか訊きにきたネ。」
(銀時:ああ、そういうこと。)
やはり惚れ薬の効果は持続しているとみられる。好きな男性と連絡を取りたいと思うのは当然至極の欲求だ。そして連絡先を知らない葵咲は、知っていそうな万事屋へと足を向けたという訳である。葵咲の行動に納得の出来た銀時は、それは表には出さずにただ頷いた。事情を話さない銀時に、今度は新八が質問を投げ掛ける。
新八「何かあったんですか?」
銀時「あー…いや、いい。」
銀時はそれだけ短く答えて万事屋を後にする。残された二人は全く事情が読めず、顔を見合わせて目を瞬かせた。
新八「…どうしたんだろ?変な銀さん。」
神楽「銀ちゃんが変なのはいつもの事アル。」
それだけを言い残し、神楽は再び部屋の中へ。銀時の行動になど興味はない。そう言わんばかりの表情であくびをする。一方新八の方も同じく銀時の行動に興味はなかった。特にそれ以上考える事もせず、玄関先の掃除へと戻った。