第87章 恋する乙女のバイブルは星座占い。
地味に様々な死線を潜り抜けて来た一郎兵衛。そんな彼が何かを感じ取ったというのだから、もしかしたらその勘は当たっていたのかもしれない。銀時はそんな事を思った。
そしてここで占師の話は一区切りして落ち着きを取り戻す。葵咲に動きがないか、再び屯所の方へと目を向ける銀時に対し、一郎兵衛は無邪気な笑顔で言葉を弾ませた。
一郎「そんな事よりさ、なんか警察の張り込み捜査みてぇだよな。オラ、ワクワクすっぞ。」
銀時「全然ワクワクなんかしねーよ!警察張り込む警察が何処にいるんだよ!つーか地味に悟空のモノマネ上手ぇなオイ!」
クオリティの高いモノマネに、生粋のジャンプ愛好家銀時は内心胸を躍らせる。もしや一郎兵衛もジャンプ好きかも。何気に気の合う二人だが、共通の趣味があれば尚更仲良くなれる。それにもまた期待を膨らませたのだった。
二人がそんな話をしていると動きが。玄関から葵咲が出てきた。
一郎「あっ!葵咲が出てきたぞ!何処か出掛けんのか?」
二人は葵咲に気付かれないように、コッソリ後を尾行(つ)ける。歩を進めると二人にとっては馴染み深い方向へ。
銀時「こっちは歌舞伎町方面だな。」
どんどん見知った景色の中へと進んでいく三人。すると葵咲はとある建物の階段を登って行った。
銀時「…ん?うち?」
まさかの万事屋訪問だった。二人は顔を見合わせて目を丸くする。万事屋に一体何の用事が?ひとまず二人は電柱の陰に身を潜め、万事屋の入口の方を見上げて様子を伺う。葵咲がインターホンを鳴らすと、中から新八が出てきた。二人は玄関で立ち話をし、中に入る様子はない。結局葵咲はそのまま万事屋を後にした。
一郎「あ。終わったみてぇだ。なんだ?やけに早ぇな。」
銀時「?」
訪れたものの、銀時不在により出てきたのだろうか。訪問理由が気になる。銀時は少し考えた後、口を開いた。
銀時「俺ちょっと話聞いてくるわ。」
一郎「じゃあ俺は葵咲の尾行続けとくぜ。」
一郎兵衛とは一旦別れ、銀時は万事屋の方へと足を向ける。そして葵咲が万事屋から離れた事を確認してから、建物の階段を上った。