第9章 一番風呂が一番良いとは限らない。
シャワールームは一人一室使えるような個室となっている。そこの一室へ二人で隠れるように入った。
土方「ふぅーっ。とりあえずはこれで大丈夫か。」
安心したのも束の間、風呂場へと入ってきた隊士達のうち数名がシャワールームの方へとやってきた。
「俺シャワーにするわ。」
「あっ、俺も俺も。」
土方「いぃっ!?」
シャワールームの個室のドアは予め閉まっている。ぱっと見は使用中なのかどうか分からないのだが、足だけは見える状態になっている為、足元を見れば誰かが使用していれば分かるような造りになっていた。
当然、この時も隊士達は足元を覗き、個室に誰もいない事を確認しようとする。この個室に二人で入っている事が分かれば怪しまれる。しかもその事が露見されれば変な誤解を招きそうだ。
そう思った土方は、葵咲を抱え上げた。
葵咲「えっ?ひゃっ!」
突然のお姫様抱っこに驚き、つい声を上げてしまう葵咲。
土方「しっ!だから声出すなって!足四本あったら怪しまれるだろうが!大人しくしとけ!(小声)」
そう言われて急いで口を噤む葵咲。だが、その状況はあまりにも突飛で、小声で土方に話しかけた。
葵咲「で、でも・・・これじゃあ…その・・・・・。(小声)」
危機的状況を打破する為に咄嗟に思いついた行動だったが、土方は顔を赤らめて下を向く葵咲を見て、自分が大胆な行動をした事に気が付いた。
土方「!! ばっ!変に意識させるんじゃ…(小声)」
そこまで言って土方も赤面する。
だが、葵咲の思惑は土方の考えていたものとは違っていた。
葵咲「私重いし、土方さん疲れるんじゃ…。(小声)」
土方「・・・・・そこはさして問題じゃねぇよ。」
こいつは俺の事を全く意識していないのか、それよりもタオル一枚って状況を何とも思ってねぇのか?と、何とも言えない気持ちを抱いた土方だったが、目の前の葵咲を見てそれもすぐに吹き飛んだ。