第9章 一番風呂が一番良いとは限らない。
そんな隊士達の問い掛けは無視し、風呂場へと入る土方。再び現れた土方を見て葵咲は、思わず叫ぶ。
葵咲「ええぇぇぇぇぇ!?」
土方「しーーーっ!声出すな!!」
葵咲「えっ!?」
その様子にただ事じゃない事を感じた葵咲は、戸惑いながらも土方の言葉に耳を傾ける。土方は持ってきたバスタオルを葵咲の前に放り、後ろを向いて言った。
土方「早く湯船から出てこれ巻け!!」
葵咲「何?どしたの?」
それだけでは状況が掴めない葵咲は、理由を問いただした。
土方「いいから早くしろォォォォォ!!他の奴らが入ってくんぞ!!」
葵咲「えぇェェェェェっ!?」
ようやく今置かれている状況が分かった葵咲は、急いで湯船から出て、目の前に置かれたバスタオルを巻いた。
土方「巻いたか!?」
葵咲「あ、うん。」
そう言われて土方は葵咲の方を振り返る。バスタオル一枚巻いた状態の葵咲に、一瞬ドキッとした土方だったが、今はそんな事を言っている場合ではない。土方は葵咲を連れて急いで出口、脱衣所の方へと向かった。なんとか脱衣所にさえ入る事が出来れば、脱衣所には死角がある。その場へ葵咲を隠れさせる事が出来れば隊士達と出くわす事はない。だが、それは叶わず、二人が脱衣所へと到着するよりも早く、隊士達が風呂場へと入ってきた。
土方「チィっ!一足遅かったか!」
そう言って土方は少し考え、シャワールームの方へと葵咲の手を引いて行った。
土方「…こっちだ!」
葵咲「あっ!ちょっ!土方さん!!」
土方達は急いでシャワールームの方へと行った為、間一髪で隊士達にはその姿は見られなかった。先程土方が風呂場へと入っていったのを目撃した隊士は、風呂場に誰もいないのを見て疑問を口に出した。
「あれ?副長さっき入っていかなかったっけ?」
「忘れ物でも取りに来て、もう出てったんじゃねぇの?」