第86章 盲目すぎる恋は周りに迷惑を掛ける。
薬の効力、適用条件、その他諸々詳細を聞き、“タダ”で提供してもらう事の対価を頭の中で精査した。そういった条件があるのなら、薬をタダで譲ってもらえる事にも納得が出来る。一郎兵衛は再びフッと笑みを漏らし、占師の目を見据えた。
一郎『…いいぜ。受けてやらぁ。』
占師『まぁ嬉しい♡ありがとぉん♡一週間経てば気持ちは元に戻っちゃうから注意してねん♡』
そう言って薬を手渡す占師。受け取った一郎兵衛は、先程の説明にはなかった事柄について質問を投げ掛ける。
一郎『一週間後に、その間の記憶がなくなったりすんの?』
占師『いいえ、それはないわん♡』
一郎『それ聞けりゃ十分だ。』
占師『?』
何が十分だというのか。記憶があっても気持ちが消えてしまう事に変わりはない。占師が目を瞬かせていると、一郎兵衛は薬を袖の下にしまいながら、不敵な笑みを浮かべて理由を述べる。
一郎『一週間でカタァつけりゃ良い話だろ?その間に、“ウソ”を“ホント”に変えてやらぁ。』
占師『ウフフ♡頼もしい限りねん♡検討を祈ってるわん♡』
占師は満足そうな笑顔で、自信に満ちた一郎兵衛の背中を見送った。