第86章 盲目すぎる恋は周りに迷惑を掛ける。
翌日。
屯所前の脇道に二人の男の影が。
一つの影は脇道の電柱から顔を覗かせ、屯所の方へ注意深く目を向けている。そう、その男とは一郎兵衛だ。そして一郎兵衛の傍らでしゃがみ込み、小指で耳を掻くのは銀時である。
銀時「なんで俺まで張り込みに付き合わなきゃなんねーんだよ。俺暇じゃねーんだけど。」
不服そうな表情で不満を述べる銀時。そんな銀時に対し、一郎兵衛は悪びれる様子がないどころか、当たり前と言わんばかりの顔でその意見に反論した。
一郎「こうなったのもお前の責任だろ?」
銀時「オメーの責任だよ!!」
謝罪の言葉も礼も言わないならこの場から去ってやろうか。そう思い、立ち上がる銀時だったが、それに対して一郎兵衛は銀時の肩にポンと手を置いて笑顔で銀時を宥めた。
一郎「まぁまぁ。だって俺、あの桂ってヤツの事何も知らねーもん。お前がいた方が安心じゃん。頼むよ。」
銀時「ったく…。」
気さくに述べるその態度に、銀時の怒りは消えてしまう。まぁ銀時としても葵咲の動向が気になるのは事実だ。暫くは一郎兵衛に付き合ってやる事とし、今度は呆れた表情を浮かべて質問を投げ掛けた。
銀時「つーかあの薬どうやって手に入れたんだよ?」
一郎「惚れ薬?ああ、あれは…」
遡る事数日前。一郎兵衛は出会った占師とのやり取りを話し始める。