第86章 盲目すぎる恋は周りに迷惑を掛ける。
総悟の一声に背中を叩かれたかのように、近藤も息を吹き返した表情で顔を上げた。
近藤「そうだぞトシ。ヤツは…敵だ。」
二人の声に、土方も鋭い眼光を取り戻した。
土方「・・・・ああ。分かってる。引いちゃいけねぇ闘いがあるって事はな。あいつに…あんな奴なんかに葵咲を渡してたまるかよ。」
山崎「副長…!」
決意表明にも捉えられる土方の言葉に、他の三人も安心したようにフッと笑みを漏らす。四人は静かに頷き、それぞれの顔を見合わせた。
土方「鬼の副長たる所以、見せてやらぁ。お前ら、葵咲を…葵咲の心を奴から取り戻すぞ。絶対にあんな奴なんかに渡しちゃならねぇ…!そうと決まれば作戦会議だ!」
三人「おぉぉォォォォっ!」
こういう時の組織力は熱い。確固たる信念を持ち、目標が定まった真選組は何よりも強かった。土方は三人にそれぞれ向き合いながら指示を出した。
土方「近藤さん、悪いが他の隊長達に会議収集依頼を掛けてくれ。幹部で作戦会議を行なう。葵咲が奴に奪われちまうって事ァ、攘夷浪士に奪われたも同然。これは真選組の威厳を掛けた闘いにもなるだろう。総力を挙げて取り掛かるぞ。」
近藤「分かった!」
土方「総悟、お前は会議室を抑えてくれるか。」
総悟「了解。」
土方「山崎は情報収集を頼む。」
山崎「はいィィィィィ!!」
各々がそれぞれの役割を担い、一度四人はこの場で解散した。
一方葵咲は、そんな会議が執り行われようとしている事など微塵も想像してはおらず、心の中で己の決意を固めていた。
(葵咲:やっぱり、ただ想うだけじゃダメだよね。待ってたって太郎ちゃんは来ない。自分から動かないと…!)