第86章 盲目すぎる恋は周りに迷惑を掛ける。
近藤はそれを相談するように、一緒に見ていた総悟に話し掛けた。
近藤「葵咲のヤツどうしたんだ?大丈夫か?」
総悟「様子が変ですねぃ。あの うわの空具合、それに時折見せる色っぽい眼差し…あれは…恋…!?」
カッと目を見開いて自らの見解を述べる総悟。それを傍で聞いていた土方は小さくため息を漏らして会話に割って入った。ちなみに先程のマヨネーズ冷奴は土方に託されており、土方が運ぶプレートの上に乗せられている。
土方「馬鹿な事言ってねーで さっさと食って仕事戻れ。」
水を差すようなその発言に、総悟は口を尖らせて反論する。
総悟「なんでぃ。ホントは土方さんも気になってるくせに。」
土方「バカ言ってんじゃねーよ!なんで俺が葵咲(あいつ)の恋路なんか気にしなきゃなんねーんだよ!」
総悟「誰も“葵咲の恋路が”なんて言ってやせんぜぃ。」
土方「あぁ!?」
山﨑「まぁまぁ…。」
その指摘が的を得ているからこその苛立ちなんだろうな、山崎は内心そう思った。山崎は土方も気付いていない深層心理に気付くが、今ここでそれを述べても火に油を注ぐ事となり、怒りの矛先が自分に向いてしまうだけ。故にその事には触れずに仲裁に入った。
山崎が二人を宥めていると、近藤が何かに気付いたように葵咲の方を指差した。
近藤「!? お、おい、あれ…!」
土方・総悟・山崎「え?」
総悟「あれは…!?」
三人が近藤に促されるまま指差す先に目をやると、そこには葵咲が準備したオムライスが。そしてその卵の上にはケチャップでエリザベスの顔が描かれていたのだ。勿論、真選組の面々はエリザベスの存在を知っている。宿敵桂小太郎の同行者、すなわち敵の顔だ。仮に敵じゃなくともあんな存在感のある生き物の存在は知られているだろう。四人は驚いた表情でオムライスを見つめる。
山﨑「桂のペットの似顔絵…!?」
総悟「まさか葵咲・・・!?」
近藤「本当に・・・・!!??」
土方「っ!」