第9章 一番風呂が一番良いとは限らない。
その事にデジャブを感じた葵咲は、思わず吹き出してしまった。
葵咲「…クスっ。退君と同じ事言ってる。」
土方「いや、そりゃ誰だってそう言うだろ!」
葵咲「有難う。でも私は後でいいから。」
後を好む理由は分からなかったが、本人がそれがいいと言うならそれ以上は言えない。強制する事でもないと思い、葵咲の意見を尊重した。
土方「まぁお前が後がいいっつーんなら無理強いはしねぇが…。とりあえず今はゆっくり入れ。…あっ、それから!さっきは何も見てねぇからな!」
葵咲「うん。ありがとう。」
正確には何も見えなかった、だったなと、言った後で思った土方だったが、バカ正直にそう言えば逆に誤解を招きそうだ。やはりあの言い方で良かったと思い直した。そしてふと腰にタオルを巻いていて良かったとも思い、安堵したのだった。
土方「…今度余った予算で女風呂でも造るか。」
独り言のようにそう呟き、自分の服を再び着ようとしたその時、他の隊士達がぞろぞろと脱衣所へ入ってきた。
「あれ?副長もう風呂入ったんすか?」
土方「えっ?あっ、いや!違う!今はダメだ!!」
今風呂場には葵咲がいる。その事を知っている土方はそう言ったが、隊士達は聞く耳を持たない。
「何言ってんですか。自分だけ入ってそりゃズルイっすよ~。俺らも早く入ろうぜ。」
土方「バカ!違ぇーよ!今はだな…あ、おい!ちょっと待てェェェェェ!!」
風呂場の状況を説明しようとする土方だったが、誰も聞かずに次々と服を脱いでいく。このままじゃマズイ!そう思った土方は、着替えようとしていた手を止め、タオルを腰に巻いた状態のまま、急いでバスタオルを持って風呂場へと向かった。
「副長もう1回入るんすか?」
「副長ってそんな風呂好きだっけ?」
「さぁ。」