第85章 やましい事は顔に書いてある。
二人はもみ合っていた腕をほどき、辺りをキョロキョロと見まわす。すると、葵咲の手にタピオカがある事を視認した。
葵咲「何いきなりモメだしてんの。喉乾いたから貰うよ~。」
銀時・一郎「!!??」
どうやら葵咲は突如もみ合い出した二人に気付き、タピオカを守る為にサッと奪い取ったらしい。葵咲はタピオカに口を付けようとする。一郎兵衛は内心ナイス!とガッツポーズをきめるが、銀時としては思わしくない事態だ。銀時は咄嗟に腰に下げている木刀を葵咲目掛けて投げ付けた。
銀時「させるかァァァァ!」
スパコーン!
木刀は見事に葵咲の額に命中。何とか葵咲がタピオカに口を付けるのを防いだ!
葵咲「あうっ!痛…っ!ちょっとォ!何すんのよォォォォ!」
額を摩りながら銀時を怒鳴りつける葵咲。だがその手の中にはまだタピオカがある。
(一郎:しめた!タピオカはまだ葵咲の手の中に…!)
それを見た一郎兵衛は、すかさず銀時に蹴りを入れた。
銀時「ゲフッ!」
一郎「葵咲ァァァァ!今だ!今のうちに…早く飲めェェェェェ!!」
一郎兵衛は銀時を抑え付けながら、葵咲に向って叫ぶ。『え?そんなに?』そう思いながらも、葵咲はタピオカに口を付けた。
銀時「…っ!だァかァらァ…させるかってんだァァァァァ!!!」
火事場の馬鹿力とはこの事か。銀時は抑え込む一郎兵衛の足元を掬い、そのまま一郎兵衛を葵咲へ向かって投げ飛ばした。
葵咲「えぇぇぇっ!!??」
一郎「ぐはぁっ!!」
葵咲「ぐえぇぇっ!!」
ドンガラガッシャーン!
飛ばされてきた一郎兵衛は180cm以上もある大柄の男性。それをまともに喰らっては、いつも真選組で鍛えている葵咲と言えど、ひとたまりもない。二人は勢いでそのまま飛ばされ、空き缶の入ったごみ箱へと突っ込んだ。
銀時「へへっ、ざまぁみろってんだ。」
葵咲「…ったぁ~い…。」
一郎「…ってててて…。」
二人はそれぞれ唸りをあげた。一郎兵衛は腰を強打したようで、仰向けの体制から起き上がって腰を摩る。葵咲は頭を打ち付けた様子。頭を摩りながらうつ伏せ状態の四つん這いから立ち上がろうとした。
その時、葵咲の前に通りがかりの男が立ち、声を掛けた。
「大丈夫か?」
第三者の声を聞きつけた一郎兵衛は、ハッとなり、慌てた様子で葵咲の方へと目を向ける。