第85章 やましい事は顔に書いてある。
一郎「『許せ銀時…また今度だ。』」
コツン。
一郎兵衛は右手の人差し指と中指を銀時の額に小突いた。そして銀時はすかさずツッコミを入れる。
銀時「なんでイタチ風!?カッコつけて言ってんじゃねーよ!」
一郎「だってサスケみてーに駄々こねるから。」
銀時「駄々こねてねぇ!サスケも駄々はこねてませんんん!」
銀時は怒りをぶつけた後はクールダウンし、落ち着いた表情でタピオカを欲しがる理由を話し始める。
銀時「今度居酒屋で一杯奢るのも今も一緒だろ。だからよこせっつってんだよ。」
まぁ銀時の言い分は分からんではない。だが、断りを入れているにも関わらず食らいつくその姿勢に、一郎兵衛は苛立ち始める。
『どんだけ“タピオカいちごオレ”に食いついてんだよ!』、その本音は隠しながら、再度断り文句を述べる。
一郎「だーかーら、これは葵咲にやるんだっつってんだろ!オメーはお呼びじゃねーんだよ!」
銀時「いいからよこせって。」
一郎「あぁ!?」
一郎兵衛の怒りがMAXに達しようとしたと同時に、銀時は一郎兵衛の腕をガシッと掴んだ。銀時の突然の行動に一郎兵衛はビクリとする。そして銀時は一郎兵衛の耳元に顔を近付け、コソッと囁きかけた。
銀時「お前 タピオカ(これ)、何か入れてんだろ?」
一郎「っ!?」
思わぬ指摘に顔を引きつらせてしまう一郎兵衛。銀時はその表情を見逃さなかった。
銀時「図星だな。何入れた?」
(一郎:ヤロォ…。)
銀時は気付いていたのだ。一郎兵衛が何か良からぬ事を企て、飲み物に“何か”を混入させていた事を。
一郎兵衛は銀時の腕を振り払おうとするが、銀時は一郎兵衛の腕をしっかり掴んでいて離さない。ギリリと拮抗し合う力に、一郎兵衛は不敵な笑みを浮かべて言葉を投げた。
一郎「ヘッ、別に身体に害のあるモンじゃねーよ。媚薬とかでもねぇし、オメーには関係ねぇ代物だ。」
銀時「関係なくなんかねーだろ…っ!テメーの汚ぇ魂胆見過ごせるかァァァ…っ!!」
一郎「くそっ!テメっ、離せ…っ!!…ん?あれ?タピオカは!?」
銀時「!?」
いがみ合う二人だったが、ここでふと一郎兵衛の手の中にあったはずのタピオカが無くなっている事に気付く。