第85章 やましい事は顔に書いてある。
歌舞伎町をぐるりと一周し、様々な店を見て回るも、これといった物は見付からず、二人は湖の見える公園の近くまで辿り着いた。
(一郎:こいつ、ホンット物欲ねぇのな。まぁそれも想定内だったけど…。)
当の本人はプレゼントの品を決めるつもりもないのか、あっけらかんとした表情である。一郎兵衛は、このままただ歩いていても仕方ないと思い、ひとまずの休憩を提案した。
一郎「そこで休憩でもしねぇ?疲れただろ?俺ジュース買ってくるわ。ここにいろよ。」
葵咲「ありがと。」
そう言って一郎兵衛は公園の端に出ていたタピオカを売ってるワゴンカーへと足を向ける。
葵咲は近くのベンチへと腰掛け、一郎兵衛の帰りを待つことにした。葵咲がぼーっと足元の鳩を眺めていると、聞き覚えのある声が頭上に降り注ぐ。
「葵咲じゃねーか。」
ふと顔を上げると、そこには銀時の姿があった。
葵咲「あ、銀ちゃん。なんでここに?」
銀時「俺は仕事帰り。」
葵咲「へぇ~!」
銀時「?」
いつもどおりの何気ない会話。特に取り立てて奇抜な発言もないと思われるが、葵咲は感嘆するような声を上げる。
葵咲「銀ちゃんでも仕事行く事あるんだね。」
銀時「どういう意味だコラァァァァァ!!いい加減その無職ニートしばりやめろや!!」
“幼馴染の坂田銀時”と認識して以降、ずっと続くニートレッテル。そろそろ認識改められたかと思いきや、まだ続いていたようだ。
だがここでそれを論争しても仕方がない。銀時は気持ち改め、葵咲に質問を返した。
銀時「お前こそ何やってんだよ?」
葵咲「私?私は…」
一郎「げっ、銀。」
葵咲が説明しようとしたその時、一郎兵衛が戻って来た。銀時が声のする方へ目を向けると、右手は懐に入れ、左手にタピオカいちごオレ(以下、タピオカ)を二つ携えた一郎兵衛が立っていた。その顔には少し引きつった苦笑いが張り付いている。
銀時「ん?一郎兵衛?なんでお前がここにいんだよ?つーかお前さ、いっつも俺見て第一声『げっ』って言うよな。やめてくんない?気分悪ィんだけど。」
ごもっともな意見だ。しかも一郎兵衛は最近よく一緒に飲みに行ったりして、つるんでいる相手だ。そんな人物からそのように言われれば地味にショックなものである。