第85章 やましい事は顔に書いてある。
一郎「次は俺だけの為に作ってくれよ。」
葵咲「えっ!」
甘い声に甘い言葉、近すぎる顔の距離に葵咲は思わずドキッとする。ただでさえ照れて赤くなっていた顔が、更に真っ赤に染まった。そんな初々しい反応を見せる葵咲にフッと吹き出して一郎兵衛は顔を離した。
一郎「なんてな。」
葵咲「もう…。またからかう!」
自分の反応を見て楽しんでいる、遊ばれていると思った。相手の思う壺だと感じた葵咲はムキーッとふくれっ面を浮かべる。だがそんな様子もまた可愛い。その本心を隠しながら、一郎兵衛は今度は真剣な眼差しで葵咲を見つめ直した。
一郎「からかっちゃいねぇよ。俺はいつでも本気だっての。ただまぁそれはまだ早ぇかなって思っただけー。」
葵咲「!」
ベッと舌を出して不敵な笑みを浮かべる一郎兵衛。流石は元ナンバーワン花魁のモテ男。色恋沙汰に鈍感な葵咲も心揺らいでしまいそうだった。ひとしきり葵咲の反応を楽しんだ一郎兵衛は満足そうな顔で今日の目的へと頭を切り替えた。
一郎「じゃあとりあえず、このへんブラっとすっか。」
葵咲「うん。」