第5章 金沢観光
「カラ松、大丈夫?」
「うーん・・・」
カラ松はもう、訳が分からないようである。
「いつもはこんなに酔っ払わないのに、どうしたんだろ。」
まつのくりすてぃーぬが独り言を言うと、カラ松は「まつのくりすてぃーぬちゃあん、大好きー!」と大きな声を出す。
「カラ松!もう夜だから!しっ!」
「ごめんなさぁい・・・」
もう目を閉じかけているカラ松は、そのままベッドに倒れ込んでしまった。
「あー・・・。まあ、あれだけ呑めばね。」
カラ松くん、君はいつもそうやって童貞の記録更新をしていくんだねぇ。その時はいつ来るのか・・・。待たされる方もツライよ?などと、まつのくりすてぃーぬはカラ松の寝顔を見ながら考えていた。
「まつのくりすてぃーぬ、好き。」
小さくカラ松が呟く。
でも、目は開かない。
まつのくりすてぃーぬはカラ松のベルトをゆるめてあげ、毛布をかけてあげた。
部屋を暗くし、浴室へ向かう。
シャワーを浴び、部屋へ戻るとカラ松は寝息を立てている。
まつのくりすてぃーぬはカラ松の髪を撫で、額にキスをした。
「おやすみ。」
そして、そのままカラ松の隣に横たわる。
二人とも、その晩は淡く光る優しい夢を見た。
翌日、目を覚ましたカラ松は顔を真っ赤にし、「ああああの!あ、お、俺、シャワー浴びる!!あの、わー!!」と、一人で慌てていた。
二日酔いも吹っ飛んだらしい。
朝食を済ませ、チェックアウトをする。
今日は、21世紀美術館と石川近代文学館を見てから東京へ戻る予定だ。
荷物をホテルに預け、美術館行きのバスを待つ。
「まつのくりすてぃーぬ、昨日、俺、お前に、その・・・して、ないよな?」
今は周りに人がいない。それでカラ松は切り出したのだろう。
「うん。」
「怒ってるか?」
「ううん。」
怒ってはいない。ただ、まつのくりすてぃーぬは少し残念だと思っている。
「カラ松と旅行だから、期待はしてた。」
「そ、そうか・・・」
カラ松は少し泣きそうになっている。
「あの、な。俺は、まつのくりすてぃーぬが、大事なんだ。お前が、一番大切なんだ。だから、ど、どうしても、お前を壊したくない。」
つっかえながらカラ松は話す。
ドクロの革ジャンを着て、サングラスを掛けるような男が、顔を真っ赤にさせて一生懸命話している。
カラ松は純情なんだ。
そこは昭和なんだ。