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淡い恋 [刀剣乱舞]

第9章 淡い恋


「ねぇ…一期…」
「はい。主様。」

同じ様に笑った顔。
しかし、彼は私を主様と呼ぶ。

「そろそろ…帰ろっか…」

彼は、『彼』じゃない。

「…お疲れに、なられましたか?」

一期は心配そうにこちらを見ている。
でも、主を気遣っての事。
分かってはいたが、現実を突きつけられるとただただ、辛い。
そう…これ以上は、辛いだけだ。

「そ、うだね…疲れちゃった…」
「主様…?」
「帰ろう…」

春香は、泣きそうな気持ちを抑えて、顔を上げると、一期は何かをじっと見ている。
後ろを振り向くと、ツリーのイルミネーションが一斉に灯った。

「そんな時間だったんだ…」

春香がポツリと呟いた。

「綺麗ですね…」

後ろで、一期が嬉しそうな声で言う。

「うん…そうだね…」

その顔を見てしまうと、一年前の事が、自分の中から溢れてしまいそうで、一期を責めてしまいそうで、振り返らずに返事をした。

「手を…」
「え?」

思わず、その言葉に振り返ると、はにかんだ笑顔の一期がこちらをみている。

「疲れているなら、手を繋ぎましょうか?春香。」
「いちご…?」

一期が春香の言葉に頷く。
そして、もう一度、春香に向かって言った。

「春香が疲れているなら、手を繋ぎましょうか?」

溢れ出す涙と同時に、春香は、一期の腕の中へ飛び込んでいった。

「一期だよね?」
「ふふふ。何をおっしゃっているんです?そうですね…私は、一期一振。春香の事が愛しくて仕方ない刀剣でございます。」

照れながらも、幸せそうな顔の一期が目の前にいる。
温かい腕の中、この、一年間で一番の笑顔を一期に向けた。

「おかえり。一期。」
「はい。ただいま戻りました。春香。」

二人は、一年前と同じ様に、クリスマスツリーの前でキスをした。

これは、クリスマスに起こった奇跡のお話。
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