第5章 儚い恋
「ありがとね、ミツ。それでね、今の本丸の状況を確認したいんだけど…」
春香が、探していた理由を思い出し、本題を伝えた。
「それなら、兼さんに聞くのが一番だよ。一番隊全員手入れ部屋だったから、あの人が全部仕切ってくれてたんだ。」
本当は、和泉守からある程度聞いては居たが、今は春香と話すのが苦しい。
春香は、そっかと少し苦笑いを浮かべた後、
「ミツ、ありがとね!」
と言い残し、和泉守を探すために出て行った。
「よく頑張ったね。」
安定が、何かを察したのか、長いため息をもらした加州を褒めた。
「嫌味にしか聞こえないんだけど。…春香の前では、可愛い俺で居たいんだよ。」
そう言いつつも、表情はとても苦しそうだ。
「可愛く居たいのもいいけど、主の深い心の傷を癒せるのは、今は加州だけだと、僕は思うけどね。」
安定は、うーんと伸びをして、加州に言った。
「俺の役目じゃない…俺がそれをすると、気持ちの隙にただつけ込んでいくだけになるじゃん。」
加州の答えに、安定は苦笑いを浮かべた。
「お前って、本当、扱いにくいよね。」
「…お前だって、一緒だろ?」
「あははっ!そりゃそうか。」
安定の返しに、ムッとしながら、それでも、少し気持ちが紛れた様な気がしていた。