第2章 一期一振、現世へ行く。
居間で待っていろと言われたので待ってはいるが、やはり落ち着かず、こういう役は、他の者達に代わってもらうべきかと考えて部屋へ引き返そうと勢いよく振り向くと、
誰かにぶつかってしまい、相手がこけそうになったので、慌てて腕を掴んだ。
「ひゃあっ!」
「わあっ!ご、ごめん…大丈夫?…って、え!?」
一期がぶつかったのは、春香だった。
「びっくりしたよぉ…って、近づくまで声をかけなかった私も悪いんだけど…って一期?」
「・・・」
一期は目を見開いて、頬を赤く染めている。
春香も、いつもの着物や袴と言う和装ではなく、当たり前だが洋服を着ている。
春香はデニムのショートパンツに、ノースリーブを着て、カーデガンを肩からかけている。
体のラインが出てしまっているので、これまでは特に意識したこともなかったが、改めて、主が女性だと認識させられた気分のようだ。
「一期、私の顔に何かついてるの?」
春香の言葉にはっと我に返った一期は慌てて掴んでいた腕を離して、勢いよく頭を下げて謝罪した。
「す、すみません!お怪我はされてないですか?」
その慌てぶりがおかしく感じ、春香は声を上げて笑っていた。
「あははは、そんなに慌てなくていいのに!
てか、さすが、ミツのセンスだね!すっごく似合ってる。私の初夏使用はどう?ちょっとは可愛くなった?って、ミツみたいな事言ってるね、私。」
少し照れて笑う春香の笑顔はいつもよりも可愛くみえる。
「と、とてもお似合いです!その…足がそんなにあらわになった状態では目のやり場に困りますが…」
一期がまじまじと見るわけにもいかず、目をそらしておろおろしていると、背伸びをした春香に顔を両手で包まれ、ぐいっとそちらを方を向かされた。
「もおっ。私くらいでそんな風だと、現世になんて行けないよ!ってこんな事してたらどんどん時間かかっちゃうね。よし!とりあえず、行ってみよう!」
半ば強引に一期の腕を掴んで、現世へと繋がる扉の鍵を開け、中へ入っていった。