第21章 そして景色は
「ヒカル、もう一度聞くよ?」
まるで最後のチャンスだ、とでも言いたげに少年は言葉を紡ぐ。
「僕と付き合わないか?」
隣にいたい、と少女は叫びたかった。
しかしこのままの自分が少年の元に行くにはあまりにも脆すぎて闇に惹き込まれてしまうだろうということが容易に想像できる。
闇に惹かれずここで踏みとどまれることこそが少女の強さでもあるのだが少女自身が気づくことはない。
『いいえ、付き合わない』
紅い瞳が更に色を増し、煮えたぎるように輝きを放つのがわかる。
震える声を絞り出し少女は言葉を紡ぐ。
『私は、リドル君の彼女にはなれないよ…リドル君と向かい合うには弱いもん…。』
「……」
無言の圧力には続けろ、とある。
少女は再度深呼吸をして続きを紡ぐ。
『嫌いじゃないの……リドル君が好きだから、隣に並びたいんだよ…』
少女の口から出た好意はlike、友愛であった。
少年の瞳には先程の煮えたぎるような輝きは感じられない。
思案の色が浮かぶ紅い瞳とは対照的に、フッと息を吐き出した少女の黒い瞳には決意が満ちていた。
『だから私は、トム・マールヴォロ・リドルとヴォルデモート卿とトモダチになりたい』
少女の口から出た友達という言葉の軽さ。
そして何より驚いていたのは少年自身だ。
差し出された手を阿呆のように見つめてしまっていた。