第16章 ささやいて
「ああ!ヒカル様っ!私めにやらせて下さい!!」
『これぐらいできるわよ!』
「ですから火の加減は私めが!」
『コーニーが作ったら手作りじゃないよ!』
「ですが怪我をされるより良いのでございます!」
厨房はお昼の準備も終わり静かなのだが、一角は1人の少女と屋敷下僕の妖精の言い争いのようなバトルが繰り広げられていた。
自分で作りたい少女と怪我をさせたくない屋敷下僕。
少女はコトコトと水が茹だっている鍋にチョコレートの入った器を浮かべ湯煎をしている。
屋敷下僕はハラハラとしながら大きな目を潤ませながらじっと少女の作業をみてる。
『ふぅー』
「ヒカル様、次から火を使うものは私めにやらせて下さいませ」
『覚えてたらね』
「またヒカル様はそうお言いになさる!前回もお約束したというのにっ!」
『あーはいはい。ごめんって、コーニー泣かないでよ』
屋敷下僕の妖精はその大きな目からポロポロと涙をこぼしボロボロの服(使い古しの枕カバーだろう)でゴシゴシ拭いている。
『でもオーブンの仕事はコーニーに譲ったじゃない。湯煎ぐらいやらないと手作りにならないよ』
「ですがヒカル様のご友人も怪我をなさることなど望んでないのであります!」
『大丈夫。私も怪我はしたくないから。気をつけるから、ね?』
お願い、というように眉を下げて微笑む少女を目にし屋敷下僕の妖精はますます大きな目に波田を浮かべて悲痛な声をあげるのだった。
「ヒカル様は酷いでございますっ!ヒカル様は私めがヒカル様のお願いをお断りできないことを知っていらっしゃるっ!」
『怪我をしたらもう何にもしないから。怪我をしないように気をつけるから許してね』
さぁ、夕飯前だけどお茶にしようか。そう少女が微笑むと屋敷下僕の妖精は鼻水を啜りながら答えるのだ。
「私めがただ今ご準備いたしますっ!本日はハーブティーなのです!」