第13章 聖なる日を前に
クリスマス休暇が始まりスリザリン寮の生徒の多くは帰省した。
少年は1人談話室で暖かな暖炉の光に照らされながら分厚い書物を読みふけっていた。
「……昼か」
幾分か空腹を感じたが過去に感じた空腹に比べれば平気なものと自身の体の訴えに無視を決め込み、
少年は広間には行かず朝起床してから口に入れたものと言えば寝起きに飲んだ紅茶のみで、
太陽が頂上を過ぎ傾き始めた頃に文字の羅列から目をあげたのだった。
杖を一振りして以前ホグズミードのお土産として貰った菓子を呼び寄せた。(決して少女の悪戯用品ではなかった)
談話室にある大きな時計を確認して少年はふと気づいた。
少女の姿を見ていない、と。
少女の名はクリスマス休暇に寮に残る名簿で確認したので帰省はしていないはずである。
そもそも少女の家はこの世界にはなくホグワーツで暮らしているのだから帰省も何もないのだ。
「ヒカル……?」
読書に夢中だったため気づかなかったのだろうか、いや自分は気配には敏感だし何よりあの少女が無言で通り過ぎるとは思えないのだ。
「チッ…」
何故かわからないが漠然とイライラと苛立ちが募る。思えば少女のことを知っているようで何も知らない。
どんな授業を選択しているのかもわからないことに気づきもう1度少年は舌打ちをした。
僕の手を煩わせて…一生しゃっくり飴を食べさせてやる
そう少年は少女からしたら理不尽にも程がある決意を抱きながら少女を探しに暖かな寮の談話室を後にしたのだった。
雪は降らないものの寒さが厳しいクリスマス休暇初日の出来事である。