第12章 イタズラ
真面目でそれでいて適度に手を抜く少女はめずらしくお菓子作りに関してはそれはそれは真面目に行なっていた。
ハロウィーンなんて文化は渋谷の人混みとクラス内でのお菓子交換で本格的なものを体験するのは初めてだった。
『これで足りるかな…?』
「お嬢様ッ!何か他にございますか?」
屋敷下僕の妖精がキラキラと大きな瞳を向け指示を心待ちにしている。
少女は厨房の片隅でかぼちゃのパウンドケーキを作っていた。
見事な焼き色が着いたそれは芳ばしい香りをあたりに充満させており個数も沢山あるようだ。
『じゃあコーニー、お菓子が詰められるビニールの小さな袋が欲しいな。』
「はいッ!ただ今。」
パチンと大きな音がすると屋敷下僕の妖精は姿を消した。
少女がパウンドケーキを丁寧に切り分けていると再びパチンと大きな音がした。
「こちらになりますッ!」
籠にはレースのペーパーが敷かれておりその上に透明の小さな袋が幾つも重なっている。
少女はあらかじめ持ってきていたテープをポケットから取り出し袋詰めを始めた。
『コーニー、ありがとう。また何かあったらお願いするね。』
屋敷下僕の妖精は大きな目を潤ませ、耳をパタパタと動かしながら恭しく一礼をすると下がっていった。
少女は本格的なハロウィーンを楽しむため鼻歌交じりにお菓子を詰め、籠に収めていった。
『こっちのお菓子は甘すぎるのよ…。』
全てを籠に入れた少女は1つ味見がてらつまみながら厨房を後にした。
かぼちゃ本来の甘みが鼻に抜ける品の良い甘さのパウンドケーキに少女は満足そうな笑みを浮かべた。