第3章 【着せ替え人形】
「やっぱり三桁の番号に電話するか。」
「花巻さん、寧ろ烏野へ連絡しましょう。」
「矢巾、それなら縁下君に直接連絡した方が尚いいんじゃないか。」
「いや俺もそうしたいけどさ渡、縁下君の連絡先しらねーんだよな。祭りの時に聞いときゃ良かった。」
「金田一を使いに走らせるとか。」
「何で俺なんだよ国見。」
「目立つしわかりやすいだろ。」
「俺は旗竿か何かかよっ。」
「金田一の返しが微妙に進化した。」
「何なのさ皆してっ。いいもんねだ、俺勝手にするもんね。」
いつもなのではという渡の呟きは虚しく部室の天井へと消えていき、及川は何を思ったのかスマホを操作し始めた。
そして気の毒な事にそれは話題の縁下美沙の義兄、縁下力に波及する。
「あの、大変申し上げにくいんですが」
スマホにかかってきた音声通話に対して力は呟いた。烏野高校男子排球部の部室、まだ部活が始まる時間ではないが物凄く迷惑な話だ。後ろでは田中と西谷が何で青城のあいつが縁下(力)にかけてくんだガルルルルと唸っていて成田と木下が一生懸命羽交い締めにしている。
「遠慮しないで申して。」
「馬鹿ですね。」
「ホントに遠慮なしっ。」
「というよりしかるべき所に連絡していいですね。」
「ちょっとっ、縁下君までマッキーみたいなこと言わないでっ。」
スマホの受話口が及川の声で喚く。縁下力は田中や西谷の珍回答を目にしたような無表情で当たり前だろと思った。いきなり音声通話をかけてきたかと思えば開口一番、美沙ちゃん貸してお着替えさせたいなどと言われたらヤバイものしか感じない。
「いやあの前からうちの美沙が絡むと不思議な事を仰るのはわかってたんですが今回はあまりにも強烈でしてその、」
力は一生懸命柔らかめに言おうとするが限度というものがあった。
「頭のお加減が悪いんですか。」
「縁下君だって美沙ちゃん絡むとキャラ変わるじゃん。そもそも君が悪いんでしょ。」
「は。」
力は聞き返す。意味がわからない。美沙を着替えさせたいという及川の電波発言と自分との関連性はどこにあるのか。