第3章 【着せ替え人形】
ある日の青葉城西高校男子バレーボール部部室での事である。
「美沙ちゃんをお着替えさせたい。」
主将の及川徹がいきなり訳のわからないことを抜かした。たちまちのうちに他の連中が反応する。
「花巻先生、変質者がいます。」
「おし国見、3桁の番号にダイアルしろ。」
「それより誰か岩泉を呼んできて。」
「はい松川先生、岩泉さんは日直です。温田さんじゃ駄目ですか。」
「せっかくだけどさ矢巾、あいつは鎮静剤としては優秀だけど変態抑制には効果ないと思う。」
「あのそれ温田さんに大変失礼では。」
「金田一はもっとネタを学ぶべき。それこそ烏野行ってあの嫁に学んでこいよ。」
「てか京谷は何してるの。」
呟く渡の視線の先にはロッカーの影に隠れてガルルルと及川にうなっている京谷の姿がある。矢巾がああと解説した。
「野生の勘で警戒してるだけだよ。」
「ちょっと皆ひどいんじゃないっ。」
「ひどかありません毎度毎度キモくて目に余りますそういや他校のバレー部どころか関係のないパソコン部にまで弄られてるって何ですか馬鹿ですか。」
「国見ちゃんが長文且つ高速できついっ。」
「まぁいじり倒すのはこのくらいにして」
松川が一呼吸おく。
「何でまたいきなりそんなキモイ事思い立った訳。」
「まっつん、よくきーてくれたっ。」
「いいから早く。」
促す松川に及川は実はねと語りだした。
「美沙ちゃんってさ、会う度私服いっつも地味なんだよね。というか森ガールっぽいのかな、それはそれで美沙ちゃんらしいんだけどせっかくだからもっとフリフリの可愛い格好してほしいなぁって。」
たちまちのうちにズザザザッという音がした。その場にいたレギュラー陣の多くがあからさまに距離を置いている。京谷に至ってはロッカーの影に隠れたまま出てこない。目だけ覗かせて次何か妙な発言があったら及川を捕食しそうな勢いだ。