第12章 【縁下兄妹、東京へ行く】前編
「心配すんな、連れてこざるを得ない状況にすりゃいーんだよ。」
半分開き直ったようにクックッと笑う黒尾は結構怖い。そうして彼はスマホを操作しはじめる。
「あの妹さんが来るとなると当日どうなるんでしょう。」
スマホを操作する黒尾を見ながら小さく呟く芝山に対し、いつも通りろくにしゃべらない福永招平はさぁと言いたげに首を傾げた。
こうして縁下美沙は巻き込まれる事になりそれは梟谷学園高校側へと伝わる事となる。
「何考えてんですか。」
赤葦京治はスマホに向かって黒尾に言う。いつもどおりの淡々とした物言いだがしかし裏でアンタ正気かと言いたげに聞こえるのは気のせいではあるまい。
「というよりむしろ驚きです、貴方が灰羽達に押し切られるなんて。」
「うるせえ言うな、というか最終研磨にゴリ押しされた。」
「孤爪がそうしたという事は相当の事態ですね。」
「馬鹿共が今回無駄に頑固でよ、ったくあの地味リボンはどこまでも。」
「ままコさんはいつもリボンじゃありませんよ。」
「知ってるし研磨にも言われっけどどうでもいいわ。」
「縁下君があげたブレスレットと指輪とリボンを日によって組み合わせ変えてるとか。」
「どんだけくれてやってんだ烏野6番頭おかしいだろ。」
「基本は至極まっとうですがままコさんが絡んだ時だけ壊れますね。」
「ああそうかよ。」
「というか黒尾さんは随分ままコさんを敵視しているように思えますが。」
「ちっと事情があってな。」
「ああ、借りがあるんでしたね。おちょくったら思わぬ反撃を食ったという所ですか。」
「うっせ。それと毎度あいつの話が出るとリエーフ以下が今回みたいに騒いでめんどくせぇ。」
「やっぱりままコさんにはコアなファンがつきますね。」