第12章 【縁下兄妹、東京へ行く】前編
さてこうなると縁下美沙が巻き込まれるまでの詳細も語らねばなるまい。
時間を巻き戻して東京都立音駒高校の男子バレーボール部の様子も見てみよう。
「烏野のみんなも誘うんですかっ。」
部室にて1年の犬岡走がワクワクテカテカとはこのことかと言いたくなるような顔で声を上げている。
「おう、どうせならと思ってな。」
主将の黒尾鉄朗はニヤッと笑う。
「いいんじゃないか、楽しくなりそうだ。」
副主将の海信行は穏やかに呟き横では夜久衛輔がいいと思うけど大丈夫なのかよと呟いている。
「何かカオスな事にならねーか。」
「それは今更だと思う。」
ボショリと言うのは黒尾の幼馴染である孤爪研磨、スマホを弄りながらだが話は聞いているらしい。
「烏野も個性強い人多いし。筆頭は翔陽だけど。」
ここで山本猛虎がウオオオオと雄叫びを上げた。
「龍と師匠とで熱く語るぜええええええっ。」
一体何をだ。という突込みの前に夜久が山本ウルセエと蹴りを入れる。蹴りを入れられた山本は一応落ち着いたが次にでっかい約一名がはいはいクロさんっと片手を挙げた。灰羽リエーフだ。
「烏野はマネちゃんズにも来てもらんですかっ。」
「おう。」
「じゃあ美沙はっ。」
一瞬男子バレーボール部の部室は静まり返った。
「は。」
沈黙の後黒尾がやっとそう呟いた。何の事か咄嗟にはわからなかったのである。
「美沙です、美沙。」
灰羽は大事な事なので2回言いましたみたいなノリで言い、しかも山本がおおと声を上げている。
「でかしたぞリエーフっ、確かに美沙さんを忘れちゃいけねーっ。」
そこまで聞いた黒尾はああ、あのとピクピクしだした。
「烏野6番とこの地味リボン。」
「クロ名前忘れてたでしょ。それにあの子いつもリボンじゃない。」
「どっちでもいーわ。つかそこの馬鹿共、あの地味リボンは数に入ってねーぞ。」
灰羽と山本どころか犬岡までもが混じってえーっと言い出した為黒尾はあったりめーだと怒鳴る。