第66章 【烏と狐といろいろの話 その7】
一方で及川が大変に意地悪な笑顔で話を続けている。
「うーん、それだったら俺も殺されたくないかなあ。美沙ちゃんの可愛い写真もむやみやたらに他の野郎共にあげたくないしねえ。」
「いやちょお待って、なんの取引、しかもなんでここで及川さんが主導権握ってはるみたいなことに。」
被写体本人が突っ込むが及川も宮兄弟もガン無視である。
「兄さん。」
被写体はその義兄に助けを求めるが、義兄はまあまあ、と義妹をなでる。
「向こうで写真で満足してもらってもいい気がしてきた。」
「わからんでもないけど、なんか嫌あ。」
言っている間に、残念なイケメン(宮城)と残念なイケメン(兵庫・双子)は話を進めている。
「及川くん、流石手強いな。」
侑が顎のあたりに手をやりながら無駄に感心し、治もうーんと唸っている。
ここで侑がせやっ、と何か閃いたらしい。
「ままコちゃんの着物姿はどないです。修学旅行の時のやつ。」
及川がピクリと反応した。
「及川くんも持ってる思うけど、それ俺らも一緒の集合写真でしょ。しかもままコちゃんが誤爆した。」
「そこっ、いらんこと言いなっ。」
「美沙、落ち着いて。」
「北さんっ、なんとか言うたってくださいって、いてはらへんしっ(いらっしゃらないし)。」
「さっきトイレ行くつって抜けてったぞ。」
白鳥沢側から瀬見に言われて項垂(うなだ)れる美沙、そんな外野を無視して残念なイケメン達は更に話を進めていた。
「俺ら単品で写ってる写真持ってるんやけど、欲しない(欲しくないか)。」
こちらもニコニコして言う侑に及川は食いついた。
「すっごく気になるけど、内容次第かなあ。」
食いついている癖に格好をつけているところは突っ込んではいけない。
侑はよっしゃと言わんばかりにスマホを取り出し、写真ビューワーで該当の写真を呼び出す。
「これ、どないです。」
及川はその画面を見せてもらい
「欲しいっ。」
即決した。
「交渉成立。」
侑と及川は綺麗に唱和して何故かガシッと握手をしていた。 どこぞの大型商談か。