第66章 【烏と狐といろいろの話 その7】
「ふっぎゃあああああああああああああああああああああっ。」
本日二回目、我慢の限界を迎えた美沙が特大の叫びを上げた。
耳を塞ぎ損ねた白鳥沢の連中は牛島以外の全員が聴力にダメージを受けた。
のちになんともなかったのは漫画やアニメ並の奇跡である。
もちろん美沙の義兄、縁下力はこれを聞き逃さなかった。
「大変だ。」
思わず呟く。
「美沙の奴、戻って早々(そうそう)牛島さん相手に何しでかしたんだ。」
「いや、ちょお待ちて(待ってよ)。」
聞きつけた侑が片手を軽く上げて突っ込んだ。
「叫んでるんままコちゃんやろ、なんでままコちゃんがしでかしたいう話になんねん(なるんだ)。」
「牛島さん相手に大ボケかまして、そのボケが自分に思いっきり返ってきてると思う。」
「特大ブーメランいうやつか。」
治にまで言われてはどうすることもできない。
「俺はどっかのお兄ちゃんが原因や思うけどな。」
北はやはり遠慮がない。
「ままコさんがお手洗い行くだけであんだけ女子についてもろてるとこ見たら誰かて(誰だって)もの申すやろ。たとえ天下のウシワカでもや。正気の沙汰やない。」
関西弁のお陰で柔らかく聞こえる一方、内容的には大分言われまくっているが義妹が絡んだ時の縁下力は動じない。
「お言葉は甘んじて受け入れるとして、とにかく俺行ってきます。」
「俺も行くー。」
「おいサム、先言うなっ。俺も俺もっ。」
「子供か。俺も行く。」
「北さん、なんで。」
「ままコさんを落ち着かせんと。」
「まま兄くんおるのに。」
「侑、この様子やと縁下君も暴走一直線やろ。」
「北さんっ、本人の前前っ。」
「どうせ聞こえてへん。」
実際は力は北に色々言われていることは聞き取っていた。
が、そこに反応するよりまずは義妹が優先されていた。