第66章 【烏と狐といろいろの話 その7】
ということで縁下力と宮兄弟、北の四人は騒ぎの中心に到着した。
「お、来た来た。遅(おせ)えって、縁下。」
早速、木下に言われてしまう。
「ふぎゃあが聞こえたのがついさっきでさ。」
「うん、じゃあ元凶として早いとこ美沙さん回収しないと。」
次に発言した成田の口調は落ち着いているが、内容が結構キツい。
「言われようがエグいな。」
「妹が便所行くだけで妙な要求すっからだろが、それも他所巻き込んで。」
「相手が潔子さん達で良かったよなっ。」
田中や西谷にまで痛いところを突かれるも、力は聞かなかった振りをして
「さて、うちの美沙は、と。」
「ままコちゃーん、生きてるかー。」
「それは大前提やろ、阿呆ツム。」
「誰が阿呆や。」
「ほな馬鹿か。」
「どつくぞ。」
義妹の姿を探して辺りを見回している間に、宮兄弟がしょうもない言い合いを始めたところで
「ここだ。」
重々しい声が響き、見ると牛島が自分より下の方を指し示している。
見慣れた細っこい姿、義妹が半泣きで立っている。
「お兄ちゃーん。」
バタバタと駆けてきた義妹はすぐ力の腕の中に飛び込んできた。
甘えたモードが行くところまで行ってしまったためにいつもの”兄さん”呼びでない点を突っ込む奴は誰もいない。
矢継ぎ早に起きるわけのわからない事態に翻弄され、月島ですら対応しきれていなかったのだ。
一方の力はよしよしと義妹の背中をなでて落ち着かせるが、あまりに人目を憚(はばか)らない様子に伊達工、音駒、梟谷、白鳥沢の多くが顔を赤くして背けている。