第12章 【縁下兄妹、東京へ行く】前編
更にその後力は音声通話をしていた。
「やあ、赤葦君。」
「久しぶり。」
スマホの受話口から落ち着いた声が聞こえる。梟谷学園高校バレー部セッターにして副主将の赤葦京治だ。
「早速だけどそっちとうちと音駒で集まる話聞いた。」
「ああ大地さんから聞いた。でもうちの美沙も来いって黒尾さん何を考えてんだか。」
「俺も直接話聞いた。灰羽とか山本あたりがうるさかったらしい。」
「しかも連れてこなかったら話自体なしにするって。」
「エグイよな。」
「ホント、完全に脅迫だよ。」
「当のままコさんは。」
赤葦はネタにする時やおちょくる時限定で美沙を動画投稿用のハンドルネームで呼ぶ。
「話したら叫んだ。」
「やっぱりか。」
「更に黒尾さんに脅されたって事を話したら着いた時どついていいかとか物騒な事言い出した。」
「無理もないな。」
電話の向こうの赤葦は息をついた。
「まあでもいいんじゃないか。」
え、と力が聞き返すと赤葦はとんでもないことを口にした。
「どっちみち君のことだからあの子を1人で置いておけないだろう。こっちついてからもわざわざ電話かけて隠れてカリャアゲ君食ってないかとかオンラインで知らない奴にリアルで会おうって誘われちゃいないかとかザリガニ釣りにでもいって川に落ちてやしないかとか確認するのが目に見えてる。」
無茶苦茶である。しかもこれを淡々と言われている分力の受けたダメージはでかい。