第65章 【烏と狐といろいろの話 その6】
ということで縁下美沙はお手洗いに行くだけのことなのに、他校のマネージャーについてきてもらうという、とてつもなく阿呆な事態―少なくとも本人にとっては―に陥(おちい)った。
とりあえずは雀田と白福に慰めてもらいつつ、烏野の連中が集まっているところへ向かう。
「清水先輩、やっちゃん。」
美沙は力なく先輩と親友に声をかけた。
あからさまに低調だったためか、清水も谷地もただごとではないと察知し、澤村以下残りの連中も美沙と同行している雀田・白福に注目している。
「美沙さん、どうしたの。」
「さっき向こうで縁下に何か言ってたみたいだけど。」
「うちのとてつもなく暴走した兄が。」
「うおいっ、事実陳列罪やめろって。」
「木下、その突っ込みも縁下にバレたらただじゃ済まないから。」
「やべっ。あ、でもそんときゃ成田、フォローよろしく。」
「で、美沙ちゃん、どうしたの。」
間に木下と成田のコメントが入る中、清水が淡々と尋ねる。
「それが、その」
美沙は滅茶苦茶ためらった。ためらうなという方が無理な相談ではある。
それでも少女は頑張って事情を説明した。