第65章 【烏と狐といろいろの話 その6】
「え、ええと」
程なく雀田が苦笑しながら呟く。
「別にいいんだけど、どうして、かな。」
当然の疑問だ。
「何分(なにぶん)人が多いので、ちょっと心配で。最近、嫌な事件も増えていますし。」
「それはわからなくもないけど。」
「縁下君てば心配し過ぎー。」
白福にまで呑気な調子で突っ込まれるも、力は譲らない。
「お願いします、このところ女性同士でも何が起こるやらわかりませんし。」
昨今(さっこん)の治安問題は縁下力に強く味方した。
梟谷の女子マネージャー陣は折れてしまった。
「もう、しょうがないわね。」
「おっけー、おっけー。美沙ちゃん、いこっかあ。」
「すみません、すみませんっ、うちの兄が意味わからんこと言うたばっかしにっ。ちゅうか兄さんの阿呆ーっ。」
「あ、途中でうちのマネージャーとも合流していただけると。」
「更に訳分からんこと追加すなーっ。」
「あー、縁下君知らんぷりしてるー。」
「もう美沙ちゃんの抗議も聞く気ないみたいね。仕方ない、行こ行こ。」
「ほんますみません。」
美沙は穴があったら入りたい、どこかしらに入る穴を掘りたいくらいの心境になった。