第65章 【烏と狐といろいろの話 その6】
当然の流れで清水も谷地も固まった。
当然の流れで聞こえてしまった他の烏野勢のほぼ全員がブーッと吹いた。
当然の流れで伊達工、音駒と梟谷の連中はほぼ全員無言でドン引き、あるいは引きつった笑いを浮かべていた。
二口堅治ですら怒鳴らなかったところから、どれだけ酷い話かがよくわかるだろう。
「事情はわかった。」
清水がやはり淡々と言った。多分内心は引いているが、こっちが困らないように配慮してくれたのだろうと美沙は思う。
「早いとこ行きましょう。」
「そうですね、清水先輩。美沙さんの心がまだ保(も)ってるうちに。」
「ほんま申し訳ない。」
「そんながっくりしないで。誰も美沙ちゃんのこと責めてないから。」
「縁下君、ほんとに美沙ちゃん大好きだねー。」
「あ、私も一緒に行きます。この流れだし。」
「ありがとう、滑津さん。助かる。」
「いや清水先輩、ちょお待ってください、いくらなんでも滑津さんまで。」
「いいのいいの、私が勝手にやってるし。お兄ちゃんも安心でしょ。」
「うちの兄さん、どう認知されとんの。」
女子陣に大変気遣われてしまい、これは十分泣いていい案件だと思う美沙であったが
「あーっ。」
ここで一番聞き覚えのある面倒くさいイケメンボイスが響いた。
「美沙ちゃん、みーけっ。」
「ようわからんひみつ見つけたみたいに言いなーっ(言うな)。」
いい加減読まされる読者諸氏もたまったものではないだろうが、生憎ここには映像機能がないので書いておくと、青葉城西高校の及川徹その人であった。
次章に続く