第63章 【烏と狐といろいろの話 その4】
「わかったらよろし。」
侑はうんうんと先輩らしく頷きつつ、内心はよっしゃー、と思っている。
「で」
「まだお話終わってへんかった。」
「癒される件やけど。」
「はい。」
「もっかいこっち見て。」
美沙の視線はもう侑から外れていた。日頃交流をしていない相手だとすぐにこうなる。
これでもよくわからない遭遇事件を何度も経験して大分マシになったほうだが、そこまでは侑にわかることではない。
「はい。」
また美沙の大きめの目が侑に向けられた。
「うん、やっぱりなあ。」
侑は思ったままを口にした。
何がと尋ねる美沙に少年はニィッと笑った。
「ままコちゃんはアレやん。」
「どれ。」
「えらい疑り深いとこあるけど。」
「色々あったんで。」
「結局のとこ」
言いながら侑はぼんやりと今俺どんな顔してるんかな、と思う。
「悪いこと考えてへんから癒されるんやて。」
言われた美沙はキョトンとする。
「ちょっと何言うてはるんかわからんです。私、そんなええ子やない。」
長い睫毛―義兄の力がいうところによると―を伏せて言う美沙の声は本気で困惑していた。
「例えば。」
おもろそう(面白そう)やからもうちょい聞いたろ、と侑は思う。
「すぐカッとなるし、すぐヤキモチ焼くし。」
「ヤキモチ焼くんや。」
まあ、まま兄くんもアレでお互い様やろしという言葉は流石に飲み込む侑である。
「あと、その」
ここで更に美沙の視線が下がる。
「実は亅
すごく言いにくそうだ。
「言うて言うて。」
軽く促してやるものの、侑の内心はこれ多分俺が頑張って聞いたげなアカンやつや、と構えている。