第63章 【烏と狐といろいろの話 その4】
いやあしかし、と侑は呟いた。
「及川くんの気持ちわかるわあ。」
「なんでやねんっ。」
高速で突っ込んでくる美沙に、侑はいつもこまめに突っ込んでくれるチームの先輩をふと重ねる。
「なんかこう、ままコちゃんて癒される。」
「及川さんもそれ言わはるんやけど。」
「あ、やっぱり。」
「意味わからんのですけど。癒し系女子ってもっと可愛い子でしょ、例えば兄と同じバレー部のマネージャーの子とか。」
「ああ、仁花ちゃんな、確かに。」
「かたや私はご覧の通りで。」
「せやからー、ままコちゃんも可愛いってー。まだ疑(うたご)うてるん。」
この子の貫く性格、こういう時は難儀やな。
まだ言うてはるわと言わんばかりに前を向いてしまった美沙に、侑は小さくため息をついた。
が、すぐにええこと思いついたと立ち直る。
「あんな(あのな)、自分。」
わざと強めに手を握り、真面目くさった調子で言ってやると、はいっと急に姿勢を正して視線を合わせるハンドルネームままコがかなり面白い。
「あの北さんが、可愛らしいって言うたんやで。」
そこかいっと突っ込んではいけない。
侑はこれが一番説得できる言葉だと本気で考えていた。
「北さんはそういうことで変に嘘つかへんから。ままコちゃんも匂いでわかるんやろ。」
言うとままコこと縁下美沙は沈黙して一瞬考えた風を見せてから、頷いた。