第62章 【烏と狐といろいろの話 その3】
「なんか関西弁講座始まっちゃってるよ。」
冴子が呟く。
「いきなり社会勉強とは、流石縁下兄妹。」
「あ、龍。どーした。」
いつの間にやら弟にして縁下カのチームメイト、田中龍之介がいた。
「休日の昼だし様子見に来たんだよ。けどまさか縁下兄妹と稲荷崎が来てるとは、大丈夫かよ。」
「まだ他の客も少ないし、美沙も叫んでないし大丈夫っしょ。」
「世界一心許(こころもと)ねえ大丈夫だな。」
「なんか言ったか。」
「なんもねえって。お、そうだ。」
ここで田中はササッとスマホを取り出して店の奥に引っ込んだ。
まずは写真共有SNSを立ち上げてグループチャットの作成にかかる。
追加するユーザーは縁下力・美沙の義兄妹を除く男子バレーボール部の面々だ。
グループチャットを作成した田中は早速、報告を入れた。
"縁下兄妹と稲荷崎の連中が来店中 関西弁講座をおっ始めたけど今んとこはトラブルなし"
程なく誰かが返信をする。
"mjk てか関西弁講座て何w"
副主将の菅原孝支だ。
"トラブルがないなら良かった"
次に主将の澤村大地が発言する。
一旦ここまで確認したところで、田中はふと客席からの会話を拾った。
"なおこのあと遊園地に行く模様"
田中は悪気がなかったのであるが、これは騒ぎの種となってしまった。