第62章 【烏と狐といろいろの話 その3】
ということで朝食も済ませて出発の時間である。
「あれ。」
玄関で靴を履きながらふと侑が言う。
「ままコちゃんのスマホケースが昨日とちゃう。」
「今日は服が暖色系やから変えました。」
「何色も持ってるんか。」
北がポツリと呟くとカがフォローする。
「俗に言うお出かけの時、服の色に合わせられるように揃えてるみたいで。」
「意外とお洒落なんか、なんなんか。」
「もっと服飾全体に興味持ってもいいと思うんですが、本人とその話をするとだいたい俺が地獄を見るのがちょっと。」
「どういう状況や。」
「細かいことはお気になさらず。」
「あれちゃうん。」
ここで治がロを狭んだ。
「窮屈なん嫌とか、昔はお金なかったとか、スタイル悪いもんが着れるんは知れとるとか言われる。」
「なんだって変なとこ察して突いてくるかな、勘弁してくれ。」
「適当に言うたらガチやった。」
「ちゅうか皆さん、本人前にして言いたい放題。」
靴を履き終えてムスッとした調子で言う美沙に、野郎共はギクリとした。
「ごめん、美沙。」
「スマンな、ままコさん。いらん事聞いたせいで。」
「ごめんて、ままコちゃん。」
宮兄弟に至っては侑は悪くないのに2人で声を揃える始末である。
「まあ、よろし(よろしい)わ。ほな行きましょ。」
「そうだな。」
義妹がすぐ切り替わったのは幸いだった。