第62章 【烏と狐といろいろの話 その3】
「さっすがままコちゃん。」
「侑も何言うてんねん。」
「や、北さん、ゆうべまま兄くんに聞かれて答えられんくて。」
「感覚的に使(つこ)てるのは分かるけど、お前も治も、もうちょい国語勉強せえ。」
「おいクソツム、朝から俺も巻き添えやんけ。」
「美沙の前で"やんけ"はやめて。」
「まあまあ、兄さん。ところで皆さん、洗面所お先にどうぞ。」
「ままコさんはええんか。」
「私、トロくて時間かかってまうんで。」
「ほな俺先ー。」
「ざけんなや、俺と北さんが先起きたんや。」
「人様の家で朝から揉める奴らがあるか。」
「すみません。」
「怒られてもたー。」
「俺もー。」
「ちょっ、こらっ、2人共兄さん以外は抱っこ禁止っ。」
「よりによって家で、俺喧嘩売られてるのかな。」
「ちょお待ってや。」
またも笑顔でキレそうな力に対し、北が静かにかつすぐ動いた。
「そこの阿呆2人。」
途端に宮兄弟は大人しくなり、美沙も2人をペチペチしていた手を止める。
「寝巻きの女子にホイホイ触る奴らがあるか、はよ離れ。」
「すいません、ままコちゃんごめん。」
双子はすぐに美沙を離して同時に謝罪した。
「なんでこないなるん。」
「スマンな、ままコさん、縁下君も。」
「いえ、北さんも大変ですね。」
「サム、俺やらかしたわ。」
「なんや、ツム。やらかすんはいつもやろ。」
「スマホ持ってきたらよかった。」
「あ、ホンマや。」
「全身うさちゃんのままコちゃんて当面見られへんもんなあ。」
「撮らなくていいから。」
「撮らんでええから。」
「お前ら、懲りへんな。」
朝から大騒ぎであった。