第62章 【烏と狐といろいろの話 その3】
「ままコさんがまたしょうもないこと言うから、つい小言を。」
「申し訳ありません、昨日から。」
「こっちも性分でついな。気にせんと。」
「あっ、ままコちゃんが全身うさちゃんやっ。」
「おはようございます、侑さん。」
「俺らも今その話してたとこ。」
「これ何、まま兄くんが着せたん。」
「そんな訳ないだろ、侑君は俺をなんだと。」
「もっと色気のあるもん着せても。」
「治君まで何言ってるんだか。嫌がる子に着せる趣味ない、可愛いからいいだろ。」
「あれ、ロリ服コスプレ」
侑が言いかけたところで止まった。
力がまた寒気のする笑みを浮かべていることに気がついたのである。
一方で美沙はそのロリ服コスプレでのとんだトラブルをまた思い出してプルプル震えだす。
「あれ別に私が希望したんちゃうもん、係の子が用意出来たんがミニスカやったんやもん、それにあれはドロワーズやもん、はみ出しパンツちゃうもん、それやのに及川さんは弄るしリエたんはめくるしいいいいい。」
「弄るとかめくるとか穏やかな話ちゃうな。一体何があってん。」
「あーすみません、北さん、軽くトラウマなので今は聞かないでいただけると。あ、そういや」
真っ赤になった顔を1人両手で覆ってブツブツ言っている義妹に、力はやや強引に話を振った。
「可愛いで思い出した。そっちの言葉で"可愛ええ"って言わないのって本当かい。」
「あれ兄さん、今更どないしたん。」
義妹はすぐに復活した。
「言わへんよ、だっておかしいもん。」
答える美沙、側では宮兄弟がなあ、とお互い顔を見合わせ、北がうんうんと頷いている。
「どういう意味で。」
「文法的な意味で。」
「つまり。」
「"可愛い"の"い"は語尾であって、良い悪いの良いって意味ちゃうでしょ。」
昨晩の侑からは明確な答えを得られなかった力はああ、と納得し、その侑がそれやーっと声を上げる。