第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
美沙と宮兄弟はそのままお茶を飲みながら談笑、例によって双子がさっきのことで美沙を弄り、美沙が突っ込んでいる様子の一方で力は3人から少し離れたところで北と静かに話していた。
「いやあ、まさか北さんからあんな言葉を聞くとは思いませんでした。」
「気づかれへん思てたんか。どう見聞きしても自分と妹、一線超えとるやろ。」
「まあ、反論する気はないです。チームの皆にももらったのは妹じゃなくて嫁って言われますし。」
困ったように笑う力に北はふう、と息をつく。
「本気、なんやな。」
「はい。」
「ままコさんもか。」
「もちろん。いっぺん、俺から引き離されたら生きていけないって言ったことが。」
「えらい深刻な台詞やけど、よう考えや。今のうちだけかしれんで。」
「いいえ。」
かぶりを振ってから縁下力は北を真っ直ぐに見つめた。
「俺はあまり自分に自信がありませんし、美沙もご覧の通り外見の劣等感がひどいけど、これだけは2人共自信があります。」
「自分、大人相手でもそれ言えるんか。」
「はい。」
きっぱりとそしてにっこり笑って言い切る力を北はしばし見つめ返す。
「ちょっと自分のこと誤解してたかもしれん、2個ほど。」
「2個、ですか。」
「1個は、美沙さんが変に見た目のことで卑屈なんは、兄貴が普段からいらんこと言うてるせいかなって思てた。でもちゃうねんな。」
「ああ、まあ、そこらへんはご存知ないのも仕方ないのでお気になさらず。」
「2個目。自分、双子が話盛っとるだけでもうちょいまとも、て思てたけど」
ここで言う自分は二人称で力のことを指している。
そして北はここで少し溜めを作った。さしもの彼もためらわれたのかもしれない。
「ほんまに頭おかしいんやな、美沙さんのこと限定で。」
西の抑揚で言われるそれは事実なので、力は苦笑するしかなかった。