第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
「北さんもそのまま流さんといてください、私に別に。」
「ほんまのこと言われてるだけやろ。自分、つくづくけったいな(おかしな)こと言うな。」
「けったいちゃうもん、兄さん、助けて。」
「否定の余地はないな。」
「あかん、兄さんまで。」
さらりと流す孫、あうあうとなりだした少女、フォローする気のないその義兄の様子を結仁依はやはりニコニコしながら画面から見ている。
「美沙ちゃんはこっちの子なん。」
「いえ、生まれも育ちも宮城です。育ててくれた祖母が瀬戸内海近くの人やったんで、それで。もう亡くなりましたが。」
結仁依はそうなんやねえ、とだけ言い、それ以上美沙の細かい事情には踏み込まない。
年を重ねているだけあって、何かを察したのか。
「ほんま可愛らしいねえ。」
そして、何故かしみじみと言い出し
「信介のお嫁さんになってもらえへんかなあ。」
予想だにしなかった言葉の連続に美沙は固まった。
こらえきれなくなった宮兄弟がブーッと吹き出してすぐにブワッハッハッと大笑いをし始める。
義兄の力はええと、と困ったように笑っている。
一方、美沙はすぐに硬直を解いて、あはは、と笑った。
「ありがとうございます。」
美沙は大分頑張った、本当ならふぎゃああと叫びたいところであったのだが。
「ばあちゃん、」
一方の孫は冷静に言うも、声色からして困惑している。
「冗談でもいきなりそれはあかんて。」
「ごめんねえ、びっくりさせてもたかな。」
「いえいえ、ちゅうか信介さんやったらもっと賢いお嫁さんやないと、ねえ。」
美沙はやはり頑張って笑いながら冗談めかして北に言う。
内心はパニックだが、何かにつけて叫んでいてはこの先やっていられないのは流石にわかっていた。
「そういうことちゃうやろ。」
わかっていないのかなんなのか、北はマジレスをする。
「ほんまごめんね、可愛らしいからつい。」
「ばあちゃんも、そういうことちゃうよ。」
やれやれとばかりに言う北であったが、次の瞬間こちらもとんだことを口にした。
「それにこの子はあかん、もう心に決めた人がおる。」
予想外すぎる発言に北以外の全員がパニくった。